しまむらの動向

「しまむら」の成長に突然ブレーキがかかった。アパレルファッションの郊外型チェーンとして店舗数を全国に張り巡らし、商品調達、MDsing、完全売り切りの仕組みも他社にないモデルを作り上げていた。しかし・・この2年不振に陥っている。その原因となったのは何か。

テキスタイルを中心とした寝具、インテリア、水回り関連商品のカテゴリー売上は、2010年以前は、並み居る著名なGMS、HC, 専門店などを遥かに凌ぐカテゴリー売上を示していた。

今、何が起こっているのか?

主力「ファッションセンターしまむら」が苦戦

株価の推移を見ても2018年7月につけた11000円台を30%近くダウンする株式市況の評価を見ても厳しさが表れている。

 しまむらは、ファッションセンターしまむらのほか、同じくカジュアル衣料の「アベイル」や子ども服の「バースデイ」など、日本だけでなく、台湾や中国なども含め計2145店舗(18年2月期末時点)を展開している。 中でも、ファッションセンターしまむらは、18年2月期末の店舗数が前期末から36店増えて1401店にまで拡大した。しかし、全店合わせた売上高は前年から1.3%減少。特に、前期末までに開店していた「既存店」の売上高が3%も減ったことが業績に響いたようだ。

「売り切り御免」「しまパト」で業績拡大

しまむらの店舗。かつては、にぎやかな陳列が目を引いた(兵庫県内で)

 しまむらは、衣料品メーカーが「不良在庫」などとして抱えている商品を返品なしの条件で完全買い取りし、「売り切り御免」で販売してきた。

 こうした商品の多くは、トレンドのデザインや個性を「売り」にしている。仮に売れ行きが好調でも、追加で仕入れたり、追加生産を依頼したりは基本的にしない。つまり、同じ種類の商品を大量に販売し、ヒット商品の追加生産を積極的に行うユニクロとは「対極」にあった。

 追加仕入れをしないビジネスモデルは、人気が出た商品の「希少価値」が生まれやすい。

 こうして「掘り出し物」を探す楽しみを消費者に提供してきたことも人気を呼んだ理由だ。定期的にしまむらの店舗に通い、掘り出し物を探す「しまパト」(しまむらパトロール)を楽しむファンも登場。業績拡大に一役買った。

時代の変化で戦略を転換

 一方、近年、格安カジュアル衣料チェーンにも、生活の様々な場面で着用できる、ユニクロのような「ベーシック」な衣料品を求める消費者が増えてきた。

 この流れには、しまむらも反応した。ユニクロのような自社企画のプライベートブランド(PB)によるベーシックな商品に注力するようになった。

 特に14年に発売した「裏地あったかパンツ」は大ヒットした。ジーンズのような見た目にもかかわらず、伸縮性に優れ、裏起毛で暖かいこのパンツは、15年に100万本以上も販売する「金字塔」を打ち立てた。

 売り場全体を見渡しやすくするため、商品を陳列するための「什器(じゅうき)」(商品棚)の高さを下げる工夫もした。また、コーディネートの提案を強化するため、マネキンの数も増やした。

店舗網拡大が裏目に

 にもかかわらず今、しまむらは不振にあえいでいる。果たして何が起きたのか。

 「しまパト」効果などで目覚ましい成長を遂げたしまむらだが、近年は店舗網の拡大に伴い、先述の「売り切り御免」による弊害も目立つようになった。

 しまむらでは商品を売り切るため、各店で売れ残った商品を、同じ商品の売れ行きが良い店舗に陳列するなど、商品の「店舗間移動」を頻繁に行う。

 この店舗間移動、店舗数が少ないうちは、全店舗の状況が把握しやすくスムーズにできていた。しかし、店舗数が多くなるにつれ、作業負担の増加や在庫管理が複雑化を招き、経営に重くのしかかるようになった。このような状況の中、販売機会を逸してしまったケースもあるのではないか。

「ユニクロ化」が「しまパト」離れに?

 先述の通り、しまむらは近年、PBなどに注力し、販売する商品数を絞り込む戦略へと舵(かじ)を切った。売れ筋の商品については、品切れによる販売機会損失を防ぐために、商品ごとの仕入れ数量を増やす傾向が見られる。まさに「ユニクロ化」だ。

 しかし、商品数を絞るということは、もちろん展開できる商品数が減ってしまうことと表裏一体だ。さらに、什器の高さを下げるなどすれば陳列スペースが減り、これが消費者の「探して、選ぶ楽しみ」を奪うデメリットがある。

 つまり、「しまパト」の醍醐(だいご)味を消し去ることになってしまうのだ。

 しまむらの業績悪化の背景にはこのような「ユニクロ化」の失敗があった、と筆者は考えている。

 それでも、裏地あったかパンツのような大ヒットが続けば業績に貢献するはずだった。しかし、18年2月期はヒット商品に恵まれず、結果的に「客の選択肢が減っただけ」になった。「ユニクロ化」が裏目に出る一方、しまむら“らしさ”も失われてしまった。これらが不振を招いたのではないだろうか。

業績不振は「格安業界」共通の悩み?

GUの店舗(横浜市内で)

 しかし、格安カジュアル衣料品店の不振は、しまむらに限った話ではない。

 急成長を続けていたユニクロの廉価ブランド・GUの業績もさえない。

 17年8月期の売上高は前年比6%増の1991億円で増収だったものの、前期まで2期連続で30%超の増収だったことを考えると、失速した感が否めない。

 GUもヒット商品に恵まれなかったことなどで、既存店売上高が3%減ったことが影響した(16年8月期は17%増)。また、営業利益は39.0%減の135億円と大幅な減益となった。17年9月~18年2月期は増収増益となったが、既存店売上高は不調が続いている。

 さらに、米GAP(ギャップ)の廉価ブランド・OLD NAVY(オールドネイビー)は12年に日本に進出したものの、わずか4年あまりで完全撤退を余儀なくされた。格安カジュアル衣料品業界にとって、今は「冬の時代」といえるかもしれない。

ネット通販で出遅れ

 格安カジュアル衣料品業界の苦境には、インターネット通販の拡大も影響している。

 ZOZOTOWN(ゾゾタウン)やアマゾン・ドット・コムといったアパレルを扱うネット通販会社は勢いを増している。ネットで衣料品を買う人が増加の一途をたどっているのだ。つまり、衣料品を扱う企業にとって、通販戦略は避けて通れなくなっているのだ。しかし、しまむらはこれまで、店舗販売を優先しネット通販には着手していなかった。 しまむらは今年、ようやく「重い腰」を上げた。ネット通販に参入する考えを示したのだ。ゾゾタウンやアマゾン、楽天市場などへの出店を検討しているという。売り上げ拡大につなげ、再び会社を成長軌道に乗せたい考えだ。 市場の変化と衣料品の価値感も大きく変化した。店頭で新品を買うよりもフリマアプリで「良質な中古品」を買ったほうがおトクと考える人が増えている。最近の若者は「売ることを前提に」高価な服を購入する傾向がみられる。ある東京都内の女子大学生も「合わなかったらすぐに売ればいい」と話す。経済産業省の推計によると、中古の車やバイクを除いた16年の中古品の市場規模は約2兆6201億円と、ここ数年で大幅に拡大している。

しまむらは、2020年をめどに全1400店舗で商品政策変更に伴う商品アイテム数10%増やす、お宝探し感をもう一度再現させしまむらの原点回帰を目指す方針。現在の店舗展開方法を16年型と呼び18年11月から新型となる20年型への変更をスタートした。2019年2月期の連結決算は売上5459億円純利益159億円46%減となった。しまむらは今、大きな岐路に立たされている。「敵」の数が増し、勢いを強める中、しまむらにはネット通販への対応に加え、商品展開の強化や苦境を乗り越えるアイデアが求められている。果たして勝算はあるのか。今後の動きを注視したい。

「しまむらの動向」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: しまむら2020 | Power Z Port @ Membership

  2. ピンバック: しまむら2019 | Power Z Port @ Membership

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